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〈幸齢社会〉高齢期の生き方を考えると、誰でも「住まい」の問題が浮かぶものです

最期まで安心の場

子の成長に伴い、環境を考えて郊外の戸建て住宅に移り、孫に囲まれ、そこで老後を迎える―

核家族化と高齢化が進み、「老後の世話」をしてくれるはずの子どもたちは当てにできなく

なりました。

広い家は掃除に疲れ、伴侶を亡くした男性は１人暮らしで苦労することもあります。

シニア世代に「あなたにとって、安心して暮らせるお住まいは？」と質問すると、最も多い

のが「最期まで安心して住める場所」「安心して死ねる場所」という答え。

ある調査では、団塊世代の８割以上が「今、住んでいる家に住み続けたい」と回答。

でも、適切な時期に改修しないと、自宅はバリアだらけで不便になりかねません。

最期まで自分らしく暮らしたいと思うのなら、元気なうちに、どこなら安心して住めて

死ねるのか、「住まい方」と「しまい方」をテーマに考える必要があるでしょう。


高齢期の住まい方は大別すると次の選択肢があります。

最期まで自宅で暮らす

できるだけ自宅に住み続け、暮らせなくなったら介護施設などに移る

早めに高齢者住宅に移り、必要なサービスを受けて暮らす、の三つです。

ただし、実際はそんな単純ではなく、予期せぬことも。

例えば近年、家庭内の事故死は交通事故死よりも多い年間１万人以上で、その８割超が

６５歳以上の高齢者。原因の大半は転倒・転落です。

死に至らなくても、こうした事故から要介護状態になることも多いので、ある日、突然に

やってくる「介護」を視野に入れて、元気なうちから準備することが重要です。

戸建てに住むＡさん夫婦は、住み慣れた地で暮らし続けたいと思い、夫の定年後に家を改修す

る予定でした。

ところが、その直前に妻が自宅で階段を踏み外して転落。

足が不自由になり、要介護２と判定されました。

こうしたケースでは、「そのうちにリフォームを」と考えていたのが手遅れとなり、

「住み替え」を余儀なくされることも少なくありません。

住宅改修には、動きやすさを考えて事故を予防しつつ、将来は介護しやすい家にすぐ転換でき

る「介護準備型のリフォーム」もあります。

リフォーム業者の選び方等は、地方公共団体の相談窓口で行うといいでしょう。

また、改修内容は「福祉住環境コーディネーター」など、介護を熟知した専門家のアドバイス

を受けるのがお勧めです。


人との交流で潤う

高齢者住宅に入居する人の多くは、８０歳を超えてからです。

しかし、中には６０代で有料老人ホームに住み替える“おひとりさま”も。

こうした人の共通点は、将来の「介護」を視野に入れていることですが、高齢者住宅の

サービスに介護が含まれていないことを理解せずに入居し、後で困るケースも少なくありませ

ん。

住宅型の有料老人ホームや「サービス付き高齢者向け住宅（サ高住）」のサービスは、

見守りと食事提供を含む介護以外の「生活支援」のみで、医療と介護は在宅と同じように

自分で依頼するのが基本。

高齢者住宅が「介護付き」を名乗るには、一定の基準を満たす必要があるのです。

高齢者住宅や施設選びのポイントは「何を求めているのか」を明確にすること。

自分（または親）の希望する条件を書き出してみてください。

高齢者住宅の情報収集は、本や雑誌、インターネット、セミナー、口コミなど多岐にわたり

ますが、最後は自分の目で確かめること。資料は、うのみにしないことです。

自宅でも高齢者住宅でも、暮らしを潤すには人との豊かなコミュニケーションが欠かせませ

ん。

住宅改修では友人が気軽に訪問できる間取りを考えたり、地域とつながりのある高齢者住宅や

施設を選んだりすることが大切です。

高齢者住宅や施設でも、そこが「暮らしの場」になっているかどうかが、人が安らかに生涯を

終える「安心して暮らせるお住まい」には求められるでしょう。